誰のために歌うの?

ジャニーズの噛んだマスカットを採集するブログ

5月の読書記録

日本文学科卒の元文芸部のくせにあまり本を読みません。

ただ気が向いた時に一気に読む傾向があります。今がそのときです。

どこまで続くかわかりませんがこれを機に読めるだけ読みたいと思います。

 

【趣味嗜好】

好きな作家は寺山修司松谷みよ子

どちらかと言えば近代文学が好き。現代文学はほとんど読まない。暗い話が好き。

 

 

 

①あゝ荒野(寺山修司

寺山修司好きを公言しておいて読んでなかったのかよ!!

10年近く前に潤くんが舞台化していた作品。観たかったなあ……。この内容をどうやって舞台化したのかも気になる。

ボクシングが題材ということもありかなりマッチョな内容でした。今「未来への10カウント」を観ているので、試合の情景が想像しやすかったです。

最後の1ページはかなり実験的で痺れました。かっこいい終わり方!

 

 

 

二十歳の原点高野悦子

1969年に鉄道自殺した女子大生の日記。

彼氏のことアルバイトのこと家族のことに混じって当たり前のように学生運動のことが書いてあるのがリアル。

歴史的な事件を市政のいち人間が語るという構図が好きです。

自殺の直接的な原因は好きな人とうまくいかなくなったから、と言われていますが、前々から自傷行為(ポットのコードで首を絞める、カミソリで指を切る)を繰り返していたり、家族と訣別宣言をしていたりと布石はあったんですよね。

元祖メンヘラ。私たちの大先輩にあたる人かもしれません。

 

 

③海と毒薬(遠藤周作

想像以上に読みやすかった。「戦時中の生体実験」というショッキングなワードが先行するけれど、もっとミクロな、生体実験に関わった医師や看護師ひとりひとりの人柄を追っていくような内容だった。あと講談社文庫の新装版で読んだんですけど、夏川草介の解説が良かったです。「神を持たない日本人」というキーワードに感嘆しました。

最近仕事で研究している「よだかの星」とか「高瀬舟」なんかと並んで、人間のグレーな善悪を描いた名作だなあと感じました。生体実験の是非だけでなく(もちろん非なのは大前提として)嫉妬心から相手の配偶者を寝取ろうとする看護婦とか、いい子を演じているのを見破られまいとする医師とか、細かな善悪まで描きながら、最終的に生体実験にまで持っていく構成が良かったです。特に女性の心理描写が上手いなあと思いました。

遠藤周作って思ったより最近の人なんですね。

 

 

銀河鉄道の夜宮沢賢治

初めて青空文庫で作品を1つ読みました。

小学校二年生くらいのときに読んで、今でも忘れられないくらい衝撃的な読書体験をもたらした本。宮沢賢治研究の一環として読み直しました。

結末がわかっていても難しい!流れていく情景全てに意味があるような気がするけれど理解が追いつかない。

すっと物語の中に入っていけるような冒頭がとてもいいな、と思いました。

 

 

⑦やまなし(宮沢賢治

宮沢賢治研究その2。小学校の教科書の定番ですね。

こちらも美しい情景に流されるばかりで理解が追いつかない……。これを小学生が読むのか。何を感じるんだ。

試しに授業案も検索して読んでみたんですが、「自然、弱肉強食の厳しさ」と出ていて「そんな安直な話じゃねえだろー!!(どかーん)」と思いました。

「やまなし」「オツベルと象」は授業してみたいけど自分の力量でできる範囲ではないような気がして怖いですね。

 

⑧二分間の冒険(岡田淳

5年ぶりくらいに会った大学の同期の子(男)が「人生のバイブル」と言っていたので読んでみた。なるほどオタクの好きそうなボーイミーツガールの冒険小説である……。冒険とかファンタジーとかめっぽう苦手なので共感できなくて申し訳ない気持ちになっている。みんなで力を合わせて敵を倒そう!だなんて、なんだか道徳の教科書みたいだったなあ。なぜ男の子向けの冒険小説には都合の良いピュアな女の子が必要なのか?設定年齢が小学校6年生なんですけど、小学校6年生の男の子はファンタジーの世界で冒険してるかもしれないが、小学校6年生の女の子はもう生理も来ていて、渋谷で知らない男に声かけられてますからね。男女の精神年齢差(男子の幼さ)を痛感しました。

 

 

銀河鉄道の父(門井慶喜

ハードカバー400ページ超えに関わらず、スラスラと読みやすかった。朝ドラのような爽やかさ。

宮沢賢治の生涯を父政次郎の目線で描いた作品。どこまでが史実でどこからがフィクションなんだろうか。

明治の時代に似つかわしくない、子どもを溺愛し献身的に支える親。これが母親と息子ではなく父親と息子というところが新しいなと感じました。

5月はずっと宮沢賢治について考えていますね。まあ仕事だし楽しいからいいんだけれど。

 

閉鎖病棟(帚木蓬生)

閉鎖病棟経験者として、フィクションで描かれる閉鎖病棟がどんなもんかと思って読んでみた。慢性病棟のせいか、病院というより老人ホームか就労支援施設って感じだった。自分のときは意外とあからさまに変な人いなかったなあ。

「患者はもう、どんな人間にもなれない。……かつてみんなは何かであったのだ。……それが病院に入れられたとたん、患者という別次元の人間になってしまう。そこではもう以前の職業も人柄も好みも、一切合財が問われない。」

この文には共感できた。入院して仕事からも家族からもヲタクからも隔離されると、自分が何者なのかわからなくなるんだよね。

全体的にテンポが悪く中弛みがひどかった。400ページ中後半150ページくらいでよかったんじゃないかってくらい。

 

 

 

今は井上ひさしの「私家版日本語文法」を読んでいます。難しくてペースダウンしていますががんばります。

 

以上5月の読書記録でした。